今頃フッ素? 古すぎるんじゃ? 専門医のプライド
最近、1.6〜3歳児がよくフッ素塗布を依頼して来院される。理由を聞くと保健センターなどで塗布を受け、以後の塗布を個人医院で行うように言われたという。しかし、当クリニックの虫歯予防の第一選択はフッ素によるものではない。このような食べる機能の発達時期にその発達を正しく促すことが小児歯科専門医としてのまず最初に行うべき事であると恩師に育てられた。歯は食べるためのひとつのパーツであり、歯がどんなに丈夫であっても食べ方が正しく行われるとは言い難い。歯がどんなによくても、正しい食べ方ができなければ、こんにゃくゼリーを丸飲みし窒息死することもあるだろうし、その発達時期をのがしたら、咬むこともうまくできない子どもに育ってしまう。大きくなって咬む練習をしても一度身に付いた食べ方はそう簡単に修正できない。正しく食べることを育み、その過程で虫歯予防が行われるのが理想であると以前から主張してきている。つまり小児歯科専門医が考える食育を徹底させてきている。(食育については以前のひとりごとに記載済み)フッ素なんかはお好みの方が勝手に塗布してくれればいいと思っている。今さら何も集団ですることでもないと思う。初診で来られた患者様に簡単にフッ素を塗布して、これで大丈夫と作り笑顔をして終わる医療行為はさぞかし楽なものであり、受けもいいであろう。収入にもプラスになるであろう。しかし、私は小児歯科専門医のプライドとして、どんなに長時間なお話を提供し、たとえそれが収入にはならなくても、私をこのように育ててくれた恩師、同門の先輩に背いて短絡的で誤った医療行為はできない。あくまでも食べることの発達を第一に考え、その上で虫歯予防を実践していくことを誰が何と言っても譲ることはできない。

ウソ!!! 母乳は虫歯になる?
たらい回しにされて、来院された可哀想な母と子がいた。2歳4ヶ月という年齢であるが、前歯にも奥歯にも重度菜虫歯が多数あり、どの歯科医院でも「母乳を与えているのが原因」と言われ、わらをもすがるきもちで当クリニックに来院された。以前から歯科の疫学的調査では、母乳を長い間与えていた子どもには虫歯が多かったという報告があった。だから、その知識から最近のエビデンスを輸入していない歯科医師は、「母乳が虫歯の原因である!!」と未だに主張し続ける。しかし、母乳それ自体が虫歯を引き起こすリスクはそんなに高くはないというエビデンスが常識となっている今、もう少し、勉強して頂きたいという気持ちがある。私が常々考えるに、母乳を長く与える母親の多くは、寝かせぎわの容易さを求めて止められないことが多い。しかし、こういった傾向を示す母親は、子どもに対して許容的である。泣き出したり、ぐずったりすると「NO !!」と言えないのである。だから、歯には悪いとはうすうす感じていても、いや、はっきりわかっていたとしても、甘いお菓子や飲み物に対するうるさいくらいの要求には耐えることができない。母乳を止めさせることが虫歯予防と教えられた母親は、母乳を与えないで子どもが眠くなるようにと就寝時間を引き延ばす。自然に眠くなってくれないかと願う。しかし、子どもは寝ない。仕方なくなく母乳を与えて寝かしつけるが、子どもが寝付く時間は遅くなる。母乳は虫歯へのリスクが低く、砂糖摂取だけに注意すれば、驚くほど長く与えていなければ、大きな問題はない。それよりも子どもにとって一番大切なことは、生活リズムの形成である。母乳を与えても8時で寝てくれるのならしばらくなら続けてもかまわないと思う。また、食事と食事の間に砂糖を含む飲み物食べ物を与えることは、折角空腹になった状態をそうでなくならせてしまう。食べる事を覚える時期に食べることを覚えない状態で食事を向かえてしまうことになる。まずは、生活リズムを整えるために、就寝時の母乳を許してやって、それよりも厳重な砂糖摂取のコントロールを行ってもらうことが最優先課題であると考える。それができて子どもが生活の軌道に乗れば、だんだん母乳がなくても寝られるであろうし、母親のあせりもなくなり母子関係も良好になるはずである。歯科医師のちょとした知識不足と指導能力不足で母親を育児ノイローゼに陥らせてしまうことがあるので、我々は十分注意せねばならないと実感した。

歯科医療の質がおちる? 吉野家歯科の登場?
先日、ネットやニュースで、厚労省との会議で、歯科医師増加に伴って歯科医療の質が低下するおそれがあると元日本歯科医学会長斉藤毅先生が示唆されたことを報道した。この意見には私も深く同感である。すでに都会ではコンビニのように、24時間診療や低料金を大々的に売りにしている歯科医院が続々と出現している。しかし、ここで患者さん側にも考えて頂きたいことがある。いかに患者側に便利な歯科医院に形体変化させたとしても、歯科医師の技量が急に変化するわけではない。今現在、若い歯科医師候補生たちにとって、臨床の経験不足が問題となっている。歯科医師増加と時代の変化に伴って、患者不足とニーズの変化、過敏なクレイム等などで、彼らたちは実際に体験する臨床量が激減していること。ミスを恐れるあまり、思い切った経験ができない、また、指導している指導医もおちおち自由なことをさせられないといった二重苦での臨床の経験不足を余儀なくされている。ということは実際、世に歯科医師という肩書きを得て放出された歯科医師たちの臨床経験不足は予想されることであり、そういった歯科医師の臨床レベルは低いということになりかねない。実際に自分の歯がどのような処置をされたかということが判断できない歯科治療は、患者側としては何を基準に歯科医師を選択するのであろうか? また、その選択肢を必死に探している歯科医師も多い。選択肢とは我々専門家が開業医の善し悪しを判断する優先順位はかなり低い。「受付の感じがよい」「電話の応答が親切」「待ち時間が少ない」その他いろいろであるが、やはりここがちがう。子どもの診療であれば、「虫歯の処理を正確にしているか」「取り残してはいけない虫歯を取りきっているか」「薬剤に頼らない虫歯予防を実践しいているか」いろいろとあるが、どれも患者側には解りづらいことであり、泣かさなく、早く終わってくれても、虫歯は正確に処理できていないケースを山ほど見る。泣かさないということは、特別なアプローチをしないかぎり、イージーな治療を施している可能性は大きいと思う。
痛くなく、早く、安くの吉野家歯科医院がもてるのには大きな落とし穴があることをわかって頂きたい。

素人の常識
医療に対する関心が広まって、医療オタクみたいな人が出現しているが、そのほとんどが自分に都合のよい解釈をしているような気がする。昨今、削らない虫歯の治療があるから、歯を削るのはよくないことだと新聞に投書した方がいる。しかし、それはケースバイケースであり、全部の症例に適しているわけではない。軟らかくなった部分は取り除くことが必要であろうし、昔のように過剰に切削しない場合もある。確かに一度削れば、修復を繰り返すことにはなる。とは言っても、虫歯を取り残して放置すればよいものでないことくらいは理解できるであろうに。しかし、オタクにはその先がある。最近では、3MIXなる妙薬があり、それが虫歯を削らないで治療できる薬などと、次の手を用意しているに違いない。プロと違うのはそこだ。まだ、その妙薬はほんとうに妙薬止まりで、確実性に欠ける。つまり、信頼性がない。信頼性のないものを頻繁には使用できないということだ。
子どもは泣いて暴れ、危険が同居しているので、一般の歯科医師はできるだけ治療したくないと思う。だからといって、進行を妨げなければならない時は、治療しなければならない。よく来院された患者さんが、「以前行った歯科医院では、大きくなるまでは治療しなくてもいい」とか「3歳までは治療できない」などと言われたと話す。しかし、絶対にそんなことはない。治療すべき事態であれば、いかなる年齢であろうとも治療しなければならない。奥歯にでっかい穴が開いていて、痛みがある歯に薬だけ塗って終わっても何も不思議ではないのであろうか?あっつ!! こんな人もいた。「子どもには麻酔はしてはいけない」なんて人。常識ってどこにあるの?

小児歯科は食育科
当クリニックのページをお読みになられた方はおわかりになられると思うが、小児歯科こそ食育の原点となる診療科である。「虫歯、虫歯」と騒ぐんじゃない!! と言いたくなる。発達期の子どもにとって一番大切なことは、食べる・遊ぶ(運動)・寝るがうまくいっているかどうかである。食べる機能を発達させるためには、食事の前は必ず空腹であることが絶対条件である。牛乳であろうが、果物であろうが、食間時に摂取することで、空腹感を損なわせるものであれば、いかに虫歯をつくらない物といっても、与えるのは避けた方が好ましい。では、食間時にはどうすればよいのか????? 遊べばよい。夢中になって、我を忘れるような集中した、しかも体を動かしての遊びができればいい。そうすれば、疲れて、食べた後はフラフラになって寝る。深い睡眠がえられる。よく育つ。毎日このような生活を送っていれば、虫歯なんてそうざらにできることはない。いや、よしんば、小さい虫歯が1本できてしまったって、どうってことはない。大切なのは、どういう育てられ方をしているかが、問題である。虫歯が多くできてしまう子どもたちの多くは、食間時に何かを摂取し、それが習慣化している。空腹で食事にのぞまないから、食べる機能も満足に発達することができない。その悪い生活リズムの流れを気づかせ、どういうふうに改善するのかをいっしょに考えていくのが小児歯科の真の仕事ではないかと考える。つまり、食育、食べることを正しく育ませれば、虫歯予防につながる。歯並びの育成にも関係する。「虫歯をつめてなんぼ、歯並び直していくら」の仕事では次元が低すぎると考える。

子離れできない母親たち
基本的に当クリニックでは、母親を同席させての治療は行っていない。これには私の確固たる理念がある。ひとことで言うなら、子どもが抱いている母親のイメージを壊さないためだ。いくら痛くないように配慮したところで、治療には少しの痛みや不安は伴う。子どもたちは、これらのストレスと向き合うことになるが、母親は治療ベッドの横で見ていたとしても、歯科医師の手を止めることはできない。子どもは「お母さん、お母さん」と泣いて叫ぶであろうが、母親は何もしてやれない。今まで子どもの悲鳴に対しては優しく対処してくれていた母が歯科に来るとただ見ているだけの人となってしまう。子どもは母親に対して、今まで抱いていた信頼感を失うことになる。母親は子どもに対して、いつでも絶対的な味方であってほしい。こんなイメージを形成させるなら、母親は横にいない方がいないと強く思う。しかし、どんなに懇切丁寧に説明したところで、全く受け入れられない母親がいる。1歳や2歳ならともかく4歳になって、子どもなりに母親から離れる必要がある時期に来ても、子どもから離れられない精神的に未熟な母親が増えてきたように思える。
悲しきおしゃぶり
昨今おしゃぶりをする子が増えている。何の抵抗もなく、いや、これがかっこいいと思ってさせている。外国のセレブたちの子どもの映像でもよく見受けられる。つい最近、おしゃぶりメーカーがついに訴えられた。胸のすく思いだった。やっと我国民もこれが罪悪だとわかってくれる日が来たのかと一瞬喜んだ。しかし、今日子どもを連れてきた母親が下の子にさせていた。むなしかった。確かに育児にとってこれを使用する事は、苦労の軽減になる。だが、その楽のために、天の仕返しは必ずある。これを「育児楽保存の法則」と名付ける。口が開くのである。この醜くなった口を治せと我々のクリニックを訪れる。ところが、これで開いた口の治療は、皮肉にも難しい。育児支援を叫ばれている中、おしゃぶりを中止させる事は、これに逆らう行為になる。母親は注意されても、いやな顔をするだけで、有り難いなんぞ到底感じてはくれない。最近は、いやな顔をされるのが辛いから言わない。しかし、言わないでおくと、罪悪感を感じてしまう。「お前はなんと弱い歯医者になったのか !! 」という声が聞こえてくる。おしゃぶりごときのために悲しくなる。

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